カスタマージャーニーと法人営業研修。業種を超えて導き出す課題と解決策。━━GeNiE株式会社

クライアント:GeNiE株式会社(https://genie-ml.com
業種:エンベデッド・ファイナンス
課題:スタートアップにともなうカスタマージャーニーの設計、BtoB営業のレベルアップ研修

━━起業当時のお話からお聞かせください。まずはどのようなご相談の経緯がありましたか?

GeNiE齊藤様(以下、齊藤様) 私どものサービスは、ECサイトなどのBtoC事業会社様が既存事業の中へ新たに金融サービスを組み込むためのプラットフォームなのですが、金融事業をまったく取り扱っていらっしゃらない業種の方々にご納得いただくというのは想像以上にハードルの高いものです。さらに、立ち上げメンバーの中に法人営業の経験者が少ない、という2つの大きな課題がありました。

岩渕 齊藤様がジーニーを立ち上げられる以前からカスタマージャーニー設計などのお手伝いをしていまして、新しい会社でもそういったことができないかとご相談をいただきました。

齊藤様 私がジーニーの親会社にいた頃ですね。今回は自分自身がゼロから会社を起こすので、独立起業された岩渕さんなら起業のことから法人営業のことまでなんでも相談に乗っていただけるのではないかと思いまして、会社立ち上げのわりと間もない時期にお声がけしました。

━━2つの課題に対する、クラウド・ブリッジの提案内容とは?

岩渕 まず1つ目は、ご依頼のあったカスタマージャーニーの設計です。「顧客体験ストーリー」とも言います。ジーニーさんの「エンベデッド・ファイナンス」という新しい事業形態は世の中にまだ浸透していないという意味でも市場開拓の難易度は高く、数多ある金融サービスの中から「ぜひ使ってみたい!」と積極的に選んでもらうためには、より一層深いニーズを掘り起こすというか、事業会社の先にいるエンドユーザーまで拡げた展開図を共有する必要があると考えていました。

齊藤様 いわゆる「絵コンテ」ですね、テレビのCM制作などで使われているような。ジーニーが描く将来像を具体的なビジュアルでお見せする必要があったんです。というのも、我々のサービス導入には(相手先企業の)社内の決裁をとるのにも時間がかかると見込んでいたので、サービスが完成する前から営業をかけていました。つまり、見せるものがなにもないという状態です。

そこで作った絵コンテというのが、実は我々のサービスの説明ではなくて、お相手の事業会社様がこのサービスを組み込んだらどんな展開になってさらにエンドユーザーもこんな体験になる、というところまでをビジュアライズしたもの。おかげで、解像度の高いイメージの共有が実現できました。

ほとんど影もかたちもないものをどううまく伝えられるか?そんな手探り状態の頃から岩渕さんにはチームの中に入っていただいて、まさにいっしょに営業資料を作っていったという感じでした。

岩渕 例えば「キャンピングカー」というお題があった場合、「この車にはこんな機能が付いている」という説明ではなく、「この車に乗る家族がどんな旅ができて、そこでどんな思い出を作るのか」ということを描きます。これが顧客体験ストーリー、カスタマージャーニーです。

メディア企業向けの「絵コンテ」の一部。エンドユーザーの目線でサービスを体験する過程を具体的にビジュアライズしている。

GeNiE高田様(以下、高田様) 私が一番印象に残っているのは、あるメディア企業の社長にプレゼンをした時ですね。まだサービスが完成していないものを社長に理解してもらい、導入のメリットを感じてもらう。若者向けのアルバイトメディアでしたので若者のお金の悩みやニーズをビジュアル化いただいた絵コンテが役立ちました。その場で即決していただけて本当に嬉しかったです。

齊藤様 ジーニーのサービスは、欲しいというような市場ができあがっておらず、確かなニーズがあるサービスがないため、サービスの先にある目的や課題を捉える必要があります。しかも、お相手が経営者なので経営課題にどう活かせるのかという上流からの提案をしなくてはいけない中で、まさしくエレベーターピッチといいますか、5分くらいで伝わるコアとなるものを、とことん岩渕さんと練り上げていきました。

岩渕 そこは意識しています。資料1ページの中でいかにポイントを押さえるかということですね。

━━顧客体験の「顧客」とは、具体的な対象者がいるのでしょうか?

岩渕 私自身が体験できることは自ら赴くことはあります。ですが、今回のようにまだサービスが形成されていない状態では、いわゆる「ペルソナ」という架空の人格設定を行います。実はカスタマージャーニー全体から見てペルソナの設定自体はあまり重要ではありません。最近ではAIでも作れてしまいます。しかし、『そのひとがどういった体験をしていくか』というストーリー設計の方が大切なのでそこに大部分のリソースを割いています。

━━いろいろな世代、性別の人格を岩渕さんの頭の中に憑依させるということなのでしょうか?空想だけではかなり難しいイメージがありますが。

齊藤様 そこは私が思うに、岩渕さんって他人の話をよく聞くひとだからなんじゃないかと思うんですよ。岩渕さんが前々職にいらした頃からのお付き合いですが、ひとの想いをすくい上げるのが上手だな~と常々思っていました。当時の岩渕さんはシステム会社の営業という立場だったと思うのですが、一度もシステムを買ってくれって言われたことがなくて。「何が課題ですか?」とか「何か困っていることはありませんか?」って、もうこちらが何も言えることがなくなるまでひたすら聞いてくるだけで、何もゴリ押しされない。もはや営業マンというよりコンサルタントの域ですよね。

岩渕 おっしゃっていただいた通り、前職も前々職も、あらゆる業態の経営、人事、開発、営業、マーケティングといった多種多様な課題と向き合わなくてはならなかったので、その経験がストックとしてあるのかもしれませんね。

齊藤様 だから、我々のクライアント企業のことを深掘りしていただくだけでなく、我々ジーニーという会社についても「どういうビジネス構想をしたらいいか」というコンセプトメイキングから岩渕さんに相談に乗ってもらっています。前職時代からの岩渕さんとのラリーで得たアイデアや進め方が今のジーニーという会社につながっていると思っていますし、我々が「こういう事業を始めます」という下地を描いて、これを世に出すために何が必要かっていうバックキャスティングを手伝ってもらっていて、本当に起業のゼロイチから伴走していただいています。

━━2つ目の課題「法人営業」についてはどのような対策になりましたか?

齊藤様 先ほどのカスタマージャーニーの設計が進んでから数ヶ月経った頃、社内のメンバー間でもだんだんと役割分担が明確になってきました。と同時に、メンバー内で法人営業に対する認識のすり合わせができていないことに気がついて、社内全体でもっとフラットに話し合える場を作ろうということになり、そこでまた岩渕さんに法人営業について相談しました。

高田様 社内のメンバーが全員親会社からの移籍で、BtoCのことはよくわかっていてもBtoBは経験もノウハウも少なかったのです。

齊藤様 大企業というのは決められた役割分担で縦のタスクをこなすが上手なひとが優秀な社員と言われます。ところがジーニーという小さな会社ではひとりひとりが幅広い領域を担っていかなければなりません。ということで、実際の法人営業の担当者だけでなく、社内メンバー全員に岩渕さんの法人営業研修を受けてもらうことになりました。

━━BtoB営業の経験がない方向けの研修で心がけていることはありますか?

岩渕 私が研修のはじめによくする例え話ですが、
・BtoCは「薬局」:すでに処方箋が出ていてそれに合うお薬を提供します。
・BtoBは「医者」:なんだか調子が悪いな~と相談に来たひとに対して、診察をしてどこに問題があるのか課題を見極め、それに対して解決策を処方します。

まずは、この違いを意識していただけるようにお伝えしています。

高田様 研修合宿では「目標逆算型で考える」という課題に取り組みました。岩渕さんの実体験や具体例を交えながらの研修を受けてようやく自分の身になってきたと言いますか、それまでは頭ではわかっていてもなかなかストーリーを描けないでいたのですが、研修を経てその後の受注率が一目でわかるように上がってきて、本当に岩渕さんのおかげかなと思っています。

岩渕 目標逆算型というのは、特に今回のように顕在化していないニーズを掘り起こす時に有効で、法人営業におけるヒアリングの目的、訪問の姿勢、目指す姿です、とお話ししました。

━━その他に、法人営業研修で印象に残ったものはありますか?

高田様 我々のサービスは一般の方はほとんど馴染みのないものですが、私たちは親会社にいた頃からすでに20年以上金融業界に勤めているのでどうしても玄人目線で話を進めてしまいがちでした。今まで金融サービスに触れたことのない方々にどうやって理解してもらうか、を岩渕さんから教わりました。

こちらが知りすぎているがゆえに何を省いていいのか、あるいは、こちらが伝えたいと思っていることが相手にとっては必要のないことであったり、伝えたいことではなく「相手が知りたいことをお話しする」と岩渕さんから教わって目から鱗が落ちました。

齊藤様 私の場合は、ずっと企画部門にいたので社内プレゼンには自信があったんです。ところが、法人営業となるとなかなか思うような成果が上がらない。岩渕さんの研修の中で「話すことより聞くことが大切」「そのひと(顧客)が何を考えていてその背景にはどんな課題が隠れているのか」という話を聞いてからは、それまでの自分のプレゼンに何が欠けていたか、に気付かされました。

岩渕 私自信もなかなか売れないセールス時代というのを経験していて、いま振り返るとあの頃は自社商品のいいことばかりを話していた気がします。似たような商品・サービスはすぐに出てくる時代の中、同業他社との競争で勝っていくためには、一歩も二歩も踏み込んだニーズの掘り起こしをしなければなりません。クライアント企業の成り立ちや業績などの知識だけなら調べれば 出てきますが、そのクライアント企業が自社顧客にあたえる価値が何かを考えると、これは深掘りしていくしかないんですよね。

━━研修は、法人営業の担当者だけでなく社内メンバー全員が受けられたとのことですが、いかがでしたか?

高田様 まずなにより「法人営業って大変なんだね」と共感してもらえることが増えましたね。親会社は業界最大手で確立した事業基盤があるため、年間何十万件というご契約を得られています。ところがジーニーのサービスは顕在化されていないニーズの掘り起こしからはじめなければならないので、そのあたりの苦労を共有できたことで社内のコミュニケーションがしやすくなりました。

齊藤様 法人にも人格があると思っているんです。ジーニーはどういう人格でいくかっていうのもメンバー全員と吟味しました。会社として持つべき価値観、例えばこういうところは絶対誰にも負けちゃいけないとか、大切にしていきたい習慣だとかは話し合って言語化していく。岩渕さんからは社内で縦割りを意識しないでフラットに話し合いましょうと指摘されて、それも研修合宿の大きな成果になったと思っています。

━━岩渕さんご自身、何百件と営業研修を催して気づかれたことはありますか?

岩渕 さまざまな業種での法人営業研修を請け負っていると、一度どこかで出てきた課題がまったく別の業種の法人営業の課題にも出てくるというケースがありまして、そうなると、私としては既に対策済みの事案なので「この場合はこうしたらいいです」と、研修という枠を超えてスムーズな解決策のご提案に至る、ということが結構な頻度で起こっています。

齊藤様 昔は銀行員がそういう立ち位置でしたよね。町や社会のことをよく知っている代表選手のような存在で、業種や規模の枠を超えてあらゆる取引先事業者の得意分野を把握していて、また同時にそれぞれの事業者の抱える課題も見ている。現代ではその役目がIT系のひとたちが加わってきているのかもしれません。いろいろな業態のお仕事をされているので、中まで深く知っていて。例えばAという業態で起こった経営課題の起点が、現場運用の効率なのか、マニュアルなのか、人事か、教育か、システムか、空気感なのか、あらゆる課題のスポットが想定されるわけですが、その課題と解決策がセットで抽象化されていくと、岩渕さんが次にBという別の業種の現場に入って診断した時に「Aという事業で起きた現象と同じだ」と、課題発見が早くて的確になってくるみたいな、ある種の能力というんでしょうか。我々が困っている内容を言語化しなくても「齊藤さん、ここ困ってますよね?」と察してくださる。

岩渕 たくさん試合に出てきた甲斐がありました。

齊藤様 そうですね。岩渕さんのスタイルは、人間の理解を深めてくれます。結局、経済活動は人間対人間。買うひとも人間だし、我々のようなサービスを導入すると決めるひとも人間。そのひとのことを理解して、お伝えする内容をそのひとに合うストーリーにカスタマイズすると納得してもらえるんじゃないかと思います。

まだ見えない潜在的な顧客に対してのサービス提供や、あるいはもっとサービスを良くしていくためには顧客を理解しないと関係性を築けません。日常業務をこなすだけで精一杯になっているとそのことを忘れがちなのですが、岩渕さんはその大切な部分を思い出させてくれます。それを我々だけで享受するのはもったいない。ちょうど、グループ会社のひとたちにも知ってもらいたいと思っていたので、近々、岩渕さんにはまた別の場での研修をお願いしているところなんです。またよろしくお願いします。

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